ご既承の通り大阪関西万博はスタートし、活況を呈しています。そのイベントの中で「空飛ぶクルマ」は特段話題にもなり興味も引いています。

3月にこのスタートに先立ち、大阪府とも関連ある団体(一社)OSKグローバルビジネス・プロモーションでは新産業創造研究機構(NIRO)の航空・宇宙部長の山北氏をおまねきし、講演をお願いしました。
以下はその概要です。
なお当日の動画は下記のURLからご覧ください。
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新産業創造研究機構の山北です。大学では造船を学んでいたんですが、川崎重工の入社時に造船が不況で、「神戸じゃなくて岐阜へ行け」と言われまして、そこからずっと岐阜に35年間航空機関係の部門にいました。
今はこの研究機構にいて、今年の3月でちょうど4年になります。


本日の内容は:
・新産業創造研究機構の概要
・空飛ぶクルマの動向
・大阪・関西万博における空飛ぶクルマ
・空飛ぶクルマの未来 です。
新産業創造研究機構、ナイロは阪神淡路大震災の際に、当時の兵庫県知事から神戸製鋼や川崎重工業、ダイエーといった大企業の社長に、「中堅・中小企業が壊滅的なダメージを受けた。何とか支援してほしい」と要請がありできました。次の4つの成長分野を掲げて活動しています。DX(デジタルトランスフォーメーション)、ロボット、環境・エネルギー、健康・医療 ・航空・宇宙産業です。
兵庫県や神戸市からの補助金をいただきながら、日々の活動を展開しています。
メンバー構成は川崎重工や神戸製鋼所などからの出向者やOBが多く在籍しており、技術者集団です。技術開発やアイデアの事業化、自動化といった支援に強みがあり、コーディネーターが企業とともにプロジェクトを推進していく、ネットワーク型のコラボレーション体制が特長です。
航空宇宙分野への取り組みについて、ご紹介します。
兵庫県および関西地域の中堅・中小企業の振興を目的として、技術的なロードマップを作成しています。


コロナで活動が一時的に落ち込みましたが、現在はほぼ回復しています。今後は、航空機の電動化や宇宙開発、水素航空機などに注力していく予定です。
上記の表が、航空・宇宙分野でナイロが取り組んでいる事業の一覧です。
以上が、ナイロの活動紹介です。
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「空飛ぶクルマの動向」についてご紹介します。

まず、「空飛ぶクルマ」という名称自体は、経済産業省が名付けたものです。
他にも、次の呼び名があります:
• eVTOL(Electric Vertical Take-Off and Landing)
• UAM(Urban Air Mobility:都市型空の移動)
• AAM(Advanced Air Mobility:先進的空の移動手段)


日本国内では、空飛ぶクルマの用途として以下のような活用が想定されています。
• 空港と都心を結ぶ旅客サービス
• 都市部でのオンデマンド輸送
• 福岡ロボットフィールドなどの実証フィールドでの活用
• 地方自治体による小包配送
• 観光地での定期旅客輸送
これらを踏まえ、2019年当時は「2025年の大阪関西万博での商業運航開始」を目標としていましたが現在は、商業運航ではなく「デモフライト(試験飛行)」に変更されています。
経済産業省と国土交通省は「空の移動革命に向けた官民協議会」を年に数回開催しています。
さらに、日本政策投資銀行(DBJ)によるオンラインシンポジウムも開催されており、次の企業や機関が参加しました:
• 国土交通省、経済産業省、関東経済産業局
• 空飛ぶクルマ開発企業:ジョビー(米)、スカイドライブ(日)、ボロコプター(独)、デンソー(日)
ジョビー(Joby Aviation)は、開発が最も進んでおり、すでに3,000時間以上の試験飛行を実施しています。
機体の概要としては:
• プロペラ6基(可動式)
• 電動モーター駆動(バッテリー式)
• 乗客4名+パイロット1名
垂直離陸後、プロペラの角度を前方に倒して水平飛行へと移行し、着陸時には再び垂直に向けます。
当初は無人飛行でしたが、最近ではパイロットを乗せた有人飛行も開始しており、アメリカの航空局(FAA)による認証の最終段階にあります。
次に「スカイドライブ(SkyDrive)」社です。
デンソーも空のモビリティに対してモーターやインバーターの供給を進めており、米国のハネウェルと提携して「リリウム」機体に対応しています。
「東レ」社は、複合材料をジョビーに提供しています。
こうした技術支援を含め、日本の中小企業も空飛ぶクルマのサプライチェーンに参入し始めています。
次のフェーズでは、「空飛ぶクルマ開発・実用化の第2弾」が行われており、次のような国際企業・ベンチャーが参加しています:
• スカイドライブ(日本)
• Beta(アメリカ)
• Vertical(イギリス)
• Leonardo(イタリア)
• Rolls-Royce(イギリス)
• Eve(ブラジル)
• Lilium(ドイツ)※現在経営破綻中
日本の中小企業では「エアロエッジ(栃木県)」が海外エンジンメーカーと直接取引をしており、部品供給の優良企業として名を連ねています。
大阪関西万博に向けた動きは、以下の通りです:

• タスクフォースが発足し、法整備やデモフライトの検討が進行中
• 実証実験に対して補助金を支給
• 東大発のスタートアップ「テトラ・アビエーション」も米国で実証飛行中(1人乗り・最高時速161km)
空飛ぶクルマの世界では、日本企業だけでなく海外勢も含めて競争が激化しています。
たとえば:
• ANA(全日空):ジョビーの機体を導入予定
• JAL(日本航空):ボロコプターからアーチャー(米国)に切り替え
• 丸紅:英国のバーティカル社と提携
• スカイドライブ:自社開発機(SD-05)を大阪万博でデモフライト予定
ただし、ボロコプターは経営再建中、リリウムとエアバスは開発中止など、脱落する企業も増えている状況です。
また、国内ではスカイドライブ以外に「SkyLink Technologies」も機体を開発中です(風洞試験済み、6人乗りのパイロット1名)。
「空の移動革命に向けた官民協議会」では、国交省・経産省が連携し、ロードマップの改定も進められています。
また、世界の空飛ぶクルマの最新ランキングは「AAMリアリティ・インデックス」というWebサイトで2ヶ月ごとに発表されています。
世界の市場規模について、モルガンスタンレーは2040年に160兆円を予測。
日本の市場規模について、モルガンスタンレーは2040年に2.5兆円を予測。
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また、「Uber Black」や「羽田-都心間」の高級移動サービスと比較しながら、事業性の試算も行っています。
ジョビーでは3.5年で投資回収、リリウムでは4.5年、バーティカルでは10.8年と見込まれています。
なお、トヨタはジョビーに出資し、開発支援を行っています。
現状では「自社開発せず、資金提供で主導権を取る」戦略を採っているようです。
空飛ぶクルマ業界では、現在「淘汰の時期」に入っており、
巨額の資金調達ができた企業のみが開発を継続できる構図となっています。
たとえば:
• ジョビー:4,000億円調達
• アーチャー:2,000億円超
• スカイドライブ:数百億円規模
今後、生き残った企業が「量産化・商業化」のステージに移行していくと考えられています。
【質疑応答】
Q: オスプレイとはどう違うのですか?
💬 回答:
オスプレイは2基のエンジンを備えたエンジン機で、プロペラのピッチを毎回転ごとに調整する高度な機構を持っています。航空燃料が高価で騒音も大きい。一方、空飛ぶクルマは電動(もしくはハイブリッド)で構造がシンプルで騒音が少なく、コストも低いという特長があります。
Q: 将来的に空飛ぶクルマが普及したとき、衝突や交通整理はどうするのでしょうか?
💬 回答:
現在は、空の道路に相当する『エアレーン(空中ルート)』を設定し、一定の高度やルートで分離通行する構想が考えられています。対面通行の制御や空域管理も含め、将来的には航空管制に近いシステムの導入が検討されています。
Q: 空飛ぶクルマのサイズはどれくらい? 大型バスのような機体も可能ですか?
💬 回答:
現時点では空飛ぶクルマのサイズは乗用車程度。スカイドライブの機体は15km、ジョビーやアーチャーでも150km程度の航続距離が限界。バッテリーが重いため、大型化には不向き。ホンダはハイブリッドで400kmを目指していますが、バスのような輸送はまだ技術的に難しい段階です。
Q: 空飛ぶクルマの実用化はいつごろ?
💬 回答:
ジョビーは2026年にニューヨークで商用運航を始める予定で、日本でもその1年後には開始される可能性があります。ANAやJALが発注済みで、本格的な普及は2027〜2028年頃と見込まれています。
Q: 日本の大手企業(トヨタや川崎重工など)はなぜ空飛ぶクルマを自社開発しないのか?
💬 回答:
空飛ぶクルマは開発に1000億円以上の資金が必要で、収益性が読めないため、大手企業は慎重な姿勢。トヨタは自社開発をせず、最有力とされるジョビーに出資。川崎重工などもドローンなど別分野に注力しています。