私のとんかつビジネスジャーニー 有限会社きりしま産業

4月16日(火)(一社)OSKグローバルビジネス・プロモーション(GBプロ)では、(有)きりしま産業代表取締役中村理恵氏をお招きし関西一橋倶楽部において、同社の創業以来の紆余曲折についてお話しいただいた。

その経験に基づくお話は、昨今の企業のスタートアップに対して示唆的なものがありました。

以下は、その概要です。

発表時動画は次のURLから→https://youtu.be/odX49v6wxb4
同社のホームページは→https://tonkatsu-kirishima.co.jp/

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 

皆様、こんにちは。本日はこの貴重な機会をいただき、誠にありがとうございます。有限会社きりしま産業の中村理恵と申します。今から「播磨、大阪、そして東京へ。私のとんかつビジネスジャーニー」と題して、私の経験を皆様と共有させていただければと思います。

 私のビジネスジャーニーは、播磨の加古川の店から始まりました。神戸製鋼の近くで、駅から遠

く、外れた場所です。ここで父が、一人の思いでとんかつ店を開業しました。父は元々豚肉を嫌っていましたが、あるとんかつに感動し、「これほど美味しいものならば、多くの人に味わってもらいたい」と店を開いたのです。

私の家族はもともと旅館業を営んでおり、その影響もあり、私たちの店では食文化の継承にも力を入れています。特に、祖父の故郷である鹿児島の食材や料理法を取り入れています。

私たちの店、「きりしま」という名前も、祖父の故郷鹿児島への思いから来ています。祖父は陸軍士官学校出身で、その後加古川に駐在しました。そこで高砂市出身の祖母と結婚し、家族としての基盤を築きました。

私たちの店は2002年7月10日に開店しましたが、場所は道路から全く見えません。初期はホームページもなく、完全に口コミのみでお客様が訪れるスタイルでした。この隠れ家的な特性が、徐々に人々に認知されるまでには時間がかかりましたが、ゆっくりとお客様に支持されるようになりました。

現在の状況としては、とんかつ専門店としてだけでなく、EC販売も手掛けており、幅広いニーズに応える形で運営しています。

2008年のリーマンショックは、私たちのとんかつ店にとって大きな試練でした。神戸製鋼の工場が近くにあるため、その影響を受け、お客様が激減しました。そんな危機的状況の中、但陽信用金庫からの紹介で参加した知的資産セミナーが転機となりました。そこで学んだのは、資金を使うだけが解決策ではなく、知恵を絞り、効率的な経営改善が重要であるということでした。

この学びを活かし、私たちは経営の棚卸しを行い、新たなビジネスモデルを構築しました。コンセプトは「日常で手が届く範囲の贅沢感」「2000円以内で楽しめる食事」「健康志向と鹿児島県のブランド豚を活用したメニュー」これらを基軸に、女性オーナーとしての視点も活かしながら、お客様一人ひとりとのつながりを大切にしたアナログな温かさを提供していきました。

そして、2010年には、知的資産報告書の完成を迎え、店舗運営だけでなく、イベント開催やコミュニティ形成を通じて、より多くの人々に認知されるよう努力しました。これが第二のスタート地点となりました。

さらに進展として、百貨店での催事への出展を始めました。この場では、地元加古川の名物「かつめし」をテーマにした商品開発にも挑戦しました。加古川かつめしバーガーという新しい試みから始まり、これがきっかけで店舗と商品が連動する大切さを学びました。最終的には、「きりしまロール~勝Katsu®」という新たな名物商品を開発し、これを名刺代わりにして広く市場に打ち出すことで、更なる認知と人気を獲得することができました。

この経験から、単にお店を持つだけでなく、積極的に外へ出て行き、新しいチャレンジをすることの重要性を実感しました。

 百貨店での催事参加は、非常に教育的な経験でした。お客様が求める価格感や、商品のディスプレイ方法、そして催事期間中の販売戦略を学ぶ大きな機会でした。

また、熟練の出店者からは、どのように効率的に展示・販売を行うかを学ぶことができ、彼らの経験から多くを学び取ることができました。シンプルでわかりやすい商品がより良く売れるということも理解しました。さらに、価格設定や在庫管理の工夫を通じて、より多くの商品を効率的に売る方法を習得しました。

この過程で、百貨店特有の厳しい品質基準に適応し、製品の品質を向上させることも重要であることが判明しました。一流百貨店での成功体験は、私たちの製品クオリティが一定の基準を満たしていることを証明しました。

これらの経験を生かし、2012年には恵方巻を市場に投入し、2017年には店舗の15周年を記念してオンラインショップでの販売を開始しました。これにより、私たちのビジネスモデルはさらに拡大しました。

次に、2018年には更に新たなステージへと進みました。この年、私の配偶者が台湾での出張中

に、日本食の国際的な魅力について深く理解する機会がありました。台湾では日本食が非常に人気があり、これが私たちにとって新たな市場としての可能性を示しました。

この経験を通じて、世界的な食のトレンドや、異なる食文化におけるニーズと制約を理解することができました。この知識は、私たちが今後グローバル市場に進出する際の大きな助けとなります。

 COVID-19パンデミックの影響を受け、私たちは店内イベントやコミュニティ活動を中止せざるを得ませんでした。その代わりに、テイクアウトやオンライン通販へと業務をシフトしていくことで、新たなビジネスチャンスを模索しました。特に、店舗が遠隔地にあることを考え、来店する価値があるかどうかを常に自問自答しながら、お客様にとっての価値を高める努力を続けています。

ウィズ・コロナの状況では、物販や対面でのビジネスが困難となりました。これを機に、すべて

のメニューを見直し、どの商品を召し上がっても満足いただけるよう、品質の底上げに取り組みました。特にロースカツにおいては、その美味しさが店の評価に直結するため注力しています。テイクアウト時ではとんかつをより楽しめるようフィレをお勧めし、工夫を重ねています。

また、時代の流れと共に健康志向が高まり、グルテンフリーやヘルシーなメニューにも注力しました。これは、20年以上の運営で培った常連客の変化するニーズに応えるためです。お肉のボリュームに対する要望も多様化しており、少なめでも満足できる料理を提供することが、今後の課題となっています。

料理の一貫性を保つことも大きな課題です。同じ食材とレシピであっても、仕上がりには個体差が生じることがあります。特に揚げ物においては、油の温度や量によって大きく変わるため、それぞれの条件に合わせた調整が求められます。このように、調理の技術が、味の一貫性を左右する重要な要素となっています。

 私たちの店では、メニュー開発において数々の要素を考慮に入れています。一つ目は、オペレーションのスムーズさです。例えば、コースメニューを提供する場合、全てのお客様に同じコースを提供することで、厨房の運営を効率化します。一方で、定食とコースが混在すると、サービスに遅れが生じる可能性があるため、そうした状況は避けています。

また、商品の多様性にも力を入れており、グルテンフリーのトンカツや珍しいルイビ豚を使用したメニュー、地元加古川のかつめしや「きりしまロール~勝Katsu®」など、異なるニーズに応える多彩なメニューを展開しています。これにより、どのようなお客様にも満足していただけるよう努めています。

2022年、私たちは「農業と福祉」という新たな分野に挑戦を始めました。このプロジェクトは、農水省の補助事業をきっかけに始まり、特に椎茸の旨味を活かしたトンカツを開発しています。椎茸粉を用いることで、トンカツの塩分を減らしつつ、味わいを深めることができ、健康志向の

高まりに対応しています。

また、このプロジェクトを通じて、障害を持つ方々への雇用機会も創出しております。これは、社会全体での活躍を促進し、私たちの店もより包括的な場所へと成長させています。実際に、障害を持つ方々が職場で重要な役割を果たしており、これが地域社会における私たちの責任と使命を果たすことにも繋がっています。

このように、私たちはただの飲食店に留まらず、地域社会に積極的に貢献し、新たな価値を提供し続けることで、多くの人々に愛される店を目指しています。お客様一人ひとりに合ったサービスを提供し、新しい試みに常に挑戦することが、私たちの店の核となる哲学です。

2023年10月、私たちは築地の場外市場で新たな販売を開始しました。ここでは特に、冷凍自動

販売機を通じて、私たちの商品を新しい形でお客様に提供しています。この自動販売機は、築地の有名な漬物屋さん:吉岡屋総本店様の前に設置され、彼らのご厚意により実現しました。ここでの商品は、べったら漬けやシャリに蒸しもち麦を使った新しいヘルシータイプのロールで、特にハーフサイズの冷凍商品を提供しております。

この取り組みから、海外のお客様にも私たちの商品を楽しんでいただけるよう、パンフレットには英語を併記し、国際的なアピールを強化しています。築地という国際的な市場での販売は、私たちにとって大きなステップであり、新たな顧客層への扉を開いています。

私たちの店は21年間の運営を経て、現場での経験とお客様との直接的な接点を大切にしています。これまでの経験は、オンライン販売や催事での販売といった新しい挑戦にも生かされており、デジタルとアナログの融合を進めています。また、流行に流されることなく、時代や地域のニーズに応じたサービスを提供し続けることが私たちの強みです。

今後の展望としては、「きりしまロール~勝Katsu®」のような商品をさらに発展させ、工場での生産へとつなげ、より多くのお客様に私たちの商品を届ける計画を進めています。また、東京と地元を行き来する生活から得た最新の食トレンドや情報を取り入れ、店舗を常にアップデートし続けることで、お客様に新鮮な体験を提供し続けることを目指しています。

私たちのビジネスジャーニーはまだ続いており、これからも皆様と共に成長していく所存です。本日は私の話をお聞きいただき、誠にありがとうございました。今後とも変わらぬご支援とご愛顧を賜りますようお願い申し上げます。

一般社団法人 OSKグローバルビジネス・プロモーション (OSK GBプロ)
 大阪府産業支援型NPO協議会海外担当
〒540-0029
大阪府大阪市中央区本町橋2-5 マイドームおおさか 6F
e-mail:mariiis@k-globiz.com

HP(web)  http://www.oskbiz.com