和歌山県かつらぎ町は、紀伊山地と和泉山脈に挟まれ、盆地に近い地形となっているため、寒暖の差が大きい。この寒暖差を利用し、様々な果物の栽培が行われている。

このかつらぎ町で、農業人口減少、高齢化の問題を乗り越え果樹園経営に高度化、組織化に取り組んでいるのが有限会社新岡農園です。(一社)OSKグローバルビジネス・プロモーション(GBプロ)では、1月に同社の家族の長女でマネジャーの竹内智美氏をお迎えし、経営、運営についてお話をいただきました。
以下はその概要です。
当日の詳細は、動画を参照ください。 動画url→https://youtu.be/Sm_tsVKtAdA
同社のweburl→ http://www.shinoka.co.jp/
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みなさん、こんにちは。和歌山県のかつらぎ町から来ました、有限会社新岡農園の竹内と申します。
今日は、和歌山の田舎でどんなことをしているのかをお話ししながら、「もし第2、第3の人生で農業を考える機会があればいいな」という思いで、お話しさせていただきます。
特に、農業における労働力不足対応及び商品開発、販路開拓について、私たちの活動内容をお伝えできればと思います。
どうぞ最後までお付き合いください。よろしくお願いいたします。
1. かつらぎ町ってどんなところ?
まず、かつらぎ町について少しご紹介します。
かつらぎ町は、大阪府に隣接した和歌山の町で、東西に短く南北に長い特徴的な地形をしています。真言宗を開いた空海の高野山のふもとまでが、かつらぎ町なんですね。

町の中心を流れる川は、奈良県では「吉野川」と呼ばれているんですが、和歌山に入ると「紀の川」という名前に変わります。
総人口は約1万5000人強で、農業をされている方が4278人、つまり4分の1くらいの人が何らかの形で農業に携わっています。
かつらぎ町は、柿の産地としても有名ですが、実は和歌山県全体でも農業がとても盛んな地域です。
特に果物の生産が盛んで、みかんや桃、梅、キウイなどが作られています。
2. 深刻化する高齢化と農業の課題
都市部ではまだあまり実感がないかもしれませんが、私たちのような田舎の地域では高齢化が大きな問題になっています。
令和5年の時点で、かつらぎ町の人口は1万5718人。そのうち、65歳以上の方が6288人、高齢化率は40%です。
さらに、これから15年後には人口が5000人減ってしまうんですが、高齢者の数はあまり減らず、高齢化率は45%になります。つまり、町を歩くと2人に1人が65歳以上という状況になってしまうんですね。
<耕作放棄地の増加>
これに伴って、農地の問題も深刻化しています。
耕作放棄地が増えていて、以前は作物を作っていた土地も、手が入らなくなって放置されてしまっているところがたくさんあります。でも、頑張れば再生できる土地も多くて、81.2ヘクタールのうち、すぐに何か植えられる土地が79.61ヘクタール、ちょっと手を加えれば使える土地が1.59ヘクタールほどあります。
<農業の担い手不足 後継者問題>
「農業をやりたい!」という人は少なく、特に若い人が農業に入ってこないのが大きな問題です。
昔は、家業として親から子へ継がれていくのが当たり前でしたが、今はそうではなくなっています。
私たちの農園でも、将来の担い手をどうするのか、非常に大きな課題です。
3.新岡農園のはじまり
では、ここで少しうちの農園についてお話しします。
新岡農園は、私の父が家督を継いだことから始まりました。
実は、父は元々パイロットになりたかったんです。でも、17歳の時に祖父が急逝してしまい、「家を継がなければならない」となったんですね。
母は、もともと農家の出身ではなく、会社員として働いていたのですが、食に関わる仕事がしたいと思い、農業の世界に飛び込みました。
その母と父が出会ったのが、農業青年クラブの全国大会。
そこからご縁があり、結婚して農業の道に進んでいったわけですが、最初は本当に大変だったと聞いています。

現在、
代表取締役は母(新岡利美)
専務は父(無口な職人肌)
私はマネージャーで、妹もマネージャー従業員は正社員5名(男性2名、女性3名)+パート4名+繁忙期のアルバイト
平成8年に法人化し、平成14年には農林水産大臣賞を受賞しました。
4. 農福連携による人手確保と地域貢献

農業は人手不足が深刻ですが、その解決策として、障がい者福祉施設と連携し、農作業の一部を担っていただく「農福連携」に取り組んでいます。

(1) 収穫作業のサポート

キウイやジャバラの収穫を、地元の障がい者福祉施設の利用者の方々に手伝っていただいています。**「出来高制」**を導入し、無理のない範囲で働ける仕組みを作っています。
(2) 加工品の製造サポート

ジャバラの皮を使ったピールやジャムの製造を、福祉施設と共同で行っています。障がい者の方々に適した作業内容を調整し、無理なく働ける環境を提供。
この取り組みは、単に人手不足を補うだけでなく、福祉と農業が手を取り合う新しい地域活性化のモデルになっています。農業は人手不足が深刻ですが、その解決策として、障がい者福祉施設と連携し、農作業の一部を担っていただく「農福連携」に取り組んでいます。
5.うちの農園で作っている主な作物

柿(1.4ヘクタール)
キウイ・桃・梅・ブドウ
ジャバラ(平成18年から栽培開始、現在2500本)
ジャバラは特に力を入れていて、標高の高い傾斜地で栽培しています。
<加工品も充実>

柿酢・柿もろみ(醸造免許取得)、
ジャバラ果汁・ジャム・ピール
スーパー・百貨店・通販で販売(オークワ・高島屋・成城石井など)
ジャバラは、花粉症対策として注目されており、健康食品としても人気があります。
6. 販売活動とPR戦略
私たちの農園は、単に生産するだけではなく、「どう売るか」に重点を置いてきました。特に、「販路を開拓し、認知度を上げ、安定的に販売する」ために、以下のような戦略を取りました。
(1) 百貨店・高級スーパーでの展開
百貨店や高級スーパーでは、商品のストーリーを伝えることが重要です。そこで、新岡農園では、商品の特徴や産地の魅力を伝えるために、試食販売を積極的に行いました。
- 関西の百貨店(高島屋・阪急・近鉄など)での試食販売
- 商品の品質を知ってもらうために、お客様と直接対話しながら販売。
- 「どこで作られているの?」「どうやって食べるの?」といった疑問に答えることで、消費者の関心を引く。
- 成城石井などの高級スーパーでの展開
- ジャバラの健康効果を意識する層をターゲットに、ジャバラ果汁や加工品を販売。
- 店舗ごとに販促用のPOPやパンフレットを設置し、消費者に伝わるよう工夫。
(2) 試食販売・イベントでの顧客開拓
新岡農園では、ただ商品を並べるだけではなく、「試食販売」や「イベント参加」を通じて、直接お客様に商品を紹介する機会を増やしました。
- 道の駅や直売所での詰め放題イベント
- ジャバラの収穫シーズンには、道の駅や直売所で「ジャバラ詰め放題」イベントを開催。
- 「こんな風に使えますよ」とレシピを配布し、家庭での活用法を紹介。
- リピーターを増やすため、イベント後に通販の案内を送付。
- 東京・大阪のマルシェでの出店
- 「地方の特産品フェア」「健康食品フェア」などに出店し、新しい顧客層を開拓。
- 実際にジャバラの試飲をしてもらい、「花粉症対策に良さそう」と関心を持ってもらう。
(3) スープストックトーキョーとのコラボ「サムシングイエロー」

スープストックトーキョーの「サムシングイエロー」イベントは、ジャバラの知名度向上に大きく貢献しました。


イベントの概要
- 「サムシングイエロー」として、黄色い食材を活用した特別メニューを展開。
- 「黄色いものを身につけた来場者にジャバラ商品をプレゼント」する企画を実施。
- コラボレーションの効果
- 東京の都市部にいる健康志向の高い消費者層にジャバラをアピール。
- 参加者がSNSで投稿し、ジャバラの話題が拡散。
(4) インターネット販売の強化
店舗販売だけでなく、インターネットを活用した販路開拓も重要です。
- 公式オンラインショップの運営
- 商品ごとの詳しい説明、レシピ紹介、農園のストーリーを掲載。
- 顧客からのレビューを集め、信頼感を醸成。
- ふるさと納税との連携
- ジャバラ果汁やジャムをふるさと納税の返礼品として登録。
- 全国の消費者にリーチできる新しい販売チャネルとして活用。
(5) メディアPR・情報発信
認知度を高めるために、メディアやSNSでの情報発信にも力を入れています。
- テレビ・雑誌での紹介
- **「和歌山の特産品特集」**などに積極的にアプローチし、取り上げてもらう。
- 健康食品に関心が高い雑誌にジャバラを掲載し、PR効果を狙う。
- SNSを活用した情報発信
- Instagram・Twitter・Facebookを活用し、ジャバラの使い方や生産の様子を発信。
- 消費者とのコミュニケーションを大切にし、ファンを増やす。
7.ジャバラ栽培のきっかけと販売の苦労
私たちがジャバラを栽培するようになったのは、平成18年のことです。
当時、和歌山県北山村でジャバラが話題になっていました。「花粉症対策に効果があるのでは?」と注目され、一気に人気が高まりました。
しかし、苦労してようやく収穫できるようになり、「北山村で売ってもらえませんか?」と相談しに行ったところ、「北山村産ではないので売れません」とはっきり断られてしまいました。
仕方なく、「じゃあ、自分たちで売るしかない」と腹をくくり、販売を始めることにしました。
8. 商品開発と協力者との出会い
ジャバラを売ると決めたものの、生の果実だけではすぐに市場が飽和してしまいます。そこで、加工品を作ることにしました。
(1) 果汁の絞り方がわからない問題
まず、果汁をどうやって絞るのかがわかりませんでした。そこで、伊藤農園さんに相談し、果汁の搾汁を委託しました。

搾った果汁は瓶詰めにしましたが、次はラベルが必要になります。「どんなデザインにすればいいのか?」と悩んでいたところ、地元のデザイナーの方が協力してくれ、「かつらぎ山のジャバラ」というロゴが生まれました。
(2) 副産物の活用とピールの開発
果汁を絞ると、大量の皮(果皮)が残ります。最初は産業廃棄物として捨てていましたが、後になって「皮に含まれるナリルチン(花粉症対策成分)は果汁の6倍ある」と知り、もったいないと感じました。
そこで、ジャバラの果皮を活用した**「ジャバラピール」**を開発。これも、地元の社会福祉法人さんと連携し、加工を依頼しました。
(3) パン屋やアイスメーカーとのコラボレーション
商品をもっと広げるために、パン屋やアイスクリームメーカーとのコラボレーションを進めました。
- 「ジャバレード」(ジャバラ果皮を細かく刻んだもの)を開発し、パンに混ぜ込めるように。
- 黒沢牧場との協力で、ジャバラ入りのアイスクリームを商品化。
こうした取り組みが実を結び、少しずつジャバラの認知度が広がっていきました。
9. 6次産業化の取り組みと課題
新岡農園では、単に果樹を育てるだけでなく、収穫した果実の加工・販売までを一貫して行う「6次産業化」に取り組んでいます。

特に、耕作放棄地の活用、ジャバラの引き取りと加工、得意分野を活かしたコラボレーションを強化しています。
(1) 耕作放棄地の借り上げと活用
- 農家の高齢化で手入れができなくなった農地を借り受け、再生
- 特にジャバラ栽培に適した傾斜地を活用し、果樹の生産拡大
- 荒れた農地を活かすことで、地域の農地保全にも貢献
現在、借り受けた農地で3ヘクタール以上のジャバラを栽培しています。
(2) ジャバラの引き取りと加工・販売
- 個人農家で売り先がないジャバラを農園で引き取り、加工品へ
- 果汁、ジャム、ピール、柑橘酢などの商品に加工
- 加工品はスーパー・百貨店・通販で販売し、農家の収益向上をサポート
これにより、農家は作ることに専念でき、新岡農園が加工・販売を担当することで、果樹農業の組織化が進んでいます。
(3) 得意分野を活かしたコラボレーション
新岡農園では、自社だけでなく、他の事業者とも協力しながら6次産業化を進めています。
- 和歌山のパン屋とコラボし、ジャバラピールを使ったパンを開発
- アイスクリームメーカーと提携し、ジャバラ果汁を活かした商品化
- 農福連携として、障害者福祉施設と協力し、果実の収穫や加工を分業
このように、それぞれの得意分野を活かしてコラボレーションを行うことで、農業の可能性をさらに広げています。
- ジャバラの引き取りと加工・販売の一元化
- 得意分野を活かしたコラボレーションによる商品開発
これにより、個人農家では難しい生産・販売を支え、地域全体の農業を活性化しています。ます。
このように、果樹農業の組織化を進めることで、個人では難しい販売や加工を補い、地域全体で農業を支える仕組みが生まれています。
10. まとめと今後の展望
新岡農園は、和歌山の田舎で地域を守りながら農業を続けています。
農業は、ただ作物を作るだけでなく、人の暮らしを支え、地域の文化や自然を守る役割もあります。
私たちは、個人農家だけでは難しい生産・加工・流通の部分を協力しながら発展させ、果樹農業の新しい形を作っていきたいと考えています。
- 農業×福祉の連携(農福連携)
- ジャバラを通じた新しいビジネスモデル
- 果樹農業の組織化による新しい農業の形
こうした仕組みを発展させることで、農業の未来をもっと明るくしていきたいと思っています。
もし私たちの商品を見かけたら、ぜひ手に取っていただけると嬉しいです!
どうぞ、今後ともよろしくお願いいたします。