東大阪プレス屋さんの日報管理システム開発 サンコー技研(株)

2024年2月20日にOSK グローバルビジネス・プロモーション(GBプロ)では、サンコー技研株式会社 田中社長をお招きし、プレス屋さんでありながら自社で必要な日報管理システムをスマホを活用した同社の新製品の開発経緯とその概要をお話し頂きました。

以下はその概要です。

なお、当日の発表詳細は動画をご参照ください。

同社の商品関連webは次を参照下さい。→https://sankogiken.com/smafac/ 

皆様、こんにちは。サンコー技研の田中と申します。本日は、私たちの取り組みについてお話させていただく機会をいただき、誠にありがとうございます。私自身、東大阪より参りました。我が社は、東大阪に根ざしたプレス加工を主業とする30名規模の町工場です。

さて、本日は特に、製造業界に向けて自ら開発したアプリケーションに関する経験を中心にお話ししたいと思います。このアプリケーションは、約4年前、製造現場で必要とされる日報のデジタル化を目指して開発されました。従来、手書きで行われていた日報作成の手間を省き、より効率的な報告方法を求めての取り組みです。開発に至ったのは、まさに自社のニーズからでしたが、完成品を見て「これは市場価値がある」と判断し、現在は外販事業の一環として展開しています。

<自己紹介>

私自身の背景について少々触れさせていただくと、八尾生まれ、東大阪育ちの49歳です。アプリケーション開発と聞くと、専門的なイメージがあるかもしれませんが、私自身はパソコン操作やプログラミングが特別得意というわけではありません。趣味でゲームをする程度で、大学も機械工学を専攻しており、プログラミングの専門教育を受けたわけではありません。しかし、そのような背景からも挑戦し、開発に成功した経験を皆様と共有できればと思います。

<会社概要>

会社としての歴史を簡単にご紹介します。1976年の創業以来、47年間にわたり、プレス加工に

携わってまいりました。3年前には代表が交代し、新たなスタートを切った矢先にコロナウイルスの影響を受けることとなりましたが、現在も精一杯頑張っております。初期はアルミケースや筐体のプレス加工から始まり、1980年代にはプリント配線板の打ち抜き作業を主に行っております。特に交通系ICカード、例えばICOCAやSUICAに使われるフィルム基板の製造において、全国の需要に応えてきました。これらの実績が、ある時期に社会科の教科書に取り上げられるほどの注目を集めたこともあります。ただし、この分野においては既にピークを迎え、現在は新たな分野へとシフトしています。主な業務は現在、半導体に使用される放熱基板の加工になります。

そして、当社の進化には補助金の支援が不可欠でした。これまでに5度の採択を受け、機械装置や金型の開発に大きく寄与していただいております。

<開発の経緯と推移>

本日は、このような経緯を持つ我が社の挑戦について、皆様と共有できることを大変嬉しく思います。特に、製造業界でのデジタル化の推進は、我々のような町工場にとっても、大きなチャンスであり、同時に課題でもあります。自社で開発したアプリケーションは、まさにその一環として、製造現場の日々の業務を支援し、効率化を図るための試みでした。

開発過程では、専門的な知識がない中での挑戦であったため、多くの困難に直面しました。しかし、それらを乗り越えた結果、自社だけでなく、他社にとっても価値のある製品を生み出すことができました。これは、技術だけでなく、現場の声を直接反映させることの重要性を再認識させられた瞬間でありました。

今回は、弊社が開発したアプリケーションについてご紹介させていただきます。このアプリは、日本アプリ開発チームにも取り上げられたことがありますが、補助金を頼らず、自社の資源だけで開発を行いました。

最近、私たちは積極的に露出を増やす努力をしており、その一環として今日もこの場を借りています。

<開発に対するニーズ>

まずは、弊社の主業であるプレス加工についてご紹介します。ICカードの製造において、累計1億枚を超える生産実績があり、これまでに一度も市場クレームを受けたことがありません。つまり、1億分の0の品質管理体制を維持しており、試作から量産までのプレス加工を全てお任せいただけると自負しております。こちらの点を強調した営業資料を冒頭に配布しておりますので、ぜひご一読ください。

弊社の工場は東大阪の玉串に位置し、本社の隣にはクリーンルームを完備した工場があり、半導体部品の加工を行っています。最近では、水槽電池車や電池の接続基板、サブモーターのエンコーダースケールなど、様々なプロジェクトに対応しています。

製造業において、誰が、いつ、何を製造したかというトレーサビリティは非常に重要です。特にプレス加工の下請け業者としては、顧客からの信頼を得るために、このような記録を6年間データとして保持しています。これが顧客からの信頼に繋がり、他社との競争における付加価値となっています。

日本の製造現場では、日々の作業記録を書く必要がありますが、通常これらは5年間保管され、問題が生じた際にのみ参照されます。このデータを有効活用できれば、現場のパフォーマンス向上に大きく寄与すると考えています。しかし、データを収集し、日々集計する作業は非常に大変であり、実現が難しいのが現状です。

ここで弊社が開発したアプリケーションの紹介に移ります。町工場である私たちでも、このような課題を解決するためのアプリを開発しました。このアプリは、製造現場での日々の作業記録をデジタル化し、容易に集計・分析ができるようにすることで、品質管理の向上と効率化を図ることを目的としています。

製造業、特にISOなどの国際規格を取得している企業にとって、誰がいつ何をしたかを記録することは必須の作業です。1週間で30名が作成する日報やその他の帳票は膨大な量になり、10年分ともなればその量は計り知れません。我が社も、交通系ICカードの製造を手掛けるにあたり、非常に厳しい製造管理と長期にわたる記録保管を要求されました。これが、自社で何とかしたいと常に考えていた課題の一つでした。

2018年頃、私たちはこの問題に対する解決策を真剣に模索し始めました。市場には営業報告をスマホから行うなどの新しいツールが登場していましたが、製造現場向けの使いやすいソリューションは見当たりませんでした。そこで、システム開発会社に相談を持ち掛けたものの、提案される見積もりはすべて高額で、開発費だけで1000万円を超えることもざらでした。機械に1000万円を投じるのであればまだ理解できますが、形のないソフトウェアにそれだけの投資をする勇気は私たちにはありませんでした。

<アジャイル開発手法に助けられる>

しかし、転機が訪れます。大阪府が新しくスタートしたIOT推進ラボに相談に行ったところ、私たちのニーズにぴったりの開発パートナーとしてサンエンジニアリングさんを紹介していただきました。彼らはアジャイル開発という手法を得意としており、従来の見積もりとは全く異なるアプローチを提案してきました。50万円で基本的な機能を持つベータ版を作り、実際に使いながら改善していくというものです。この手法はシリコンバレーで流行している開発スタイルで、初めて聞いた時は「なんじゃそれ?」と思いましたが、実に合理的な提案でした。

このサンエンジニアリングさんとの出会いが、我々のプロジェクトを大きく前進させることになりました。低予算で始められる開発プロセスは、私たちのような町工場でも手が届く範囲でした。結果として、膨大な紙の山に埋もれることなく、製造現場の日報や作業記録をデジタル化し、容易に管理・分析できるシステムを自社で開発し、さらには事業化まで進めることができました。

この経験から得た教訓は多岐にわたりますが、最も重要なのは、技術の進歩を活用して、従来の課題に対して柔軟かつ効率的な解決策を見出すことの可能性です。また、アジャイル開発のような手法が、大企業だけでなく、私たちのような小規模な製造業でも十分に活用できることを実証しました。

製造業として、特にISO規格などの品質管理基準を遵守することは、私たちの業務の重要な部分です。これには、誰がいつ何をしたかを記録することが必須であり、そのための帳票類が日々蓄積されていきます。30名のチームで1週間分の日報を作成すると、10年間で膨大な量になります。特に、私たちが手掛ける交通系ICカード製造は、日本初の電子マネーとして、非常に厳しい製造管理が求められ、10年間の記録保持が必要でした。

この経験から、私たちはアプリを事業化するまでの道のりを歩み始めました。アジャイル開発のおかげで、低コストで始められ、実際に使用しながら必要な機能を追加・改善していくことができました。このアプリは、製造業が直面する日々の記録保持の課題を解決し、さらには他の企業にもその価値を提供しています。

お話しを続けさせていただきます。我々が目指したのは、製造現場で直感的に使えるシステムの開発でした。そのため、50万円でスタートすることができるベータ版の開発は、まさに私たちが求めていた解決策でした。このアプリを使用して、スマートフォン一台で、QRコードを読み取りながら作業時間を記録するシンプルなシステムを実現しました。これにより、現場のスタッフ全員がこの一台を使い、改善点やバージョンアップのアイデアを出しながら、システムを継続的に改善していくことが可能となりました。

このプロセスを通じて、システムは徐々に使いやすくなり、最終的には極めてシンプルながらも高機能なシステムが完成しました。このシステムを使うようになると、現場からはリアルタイムでデータを見たいという声が上がりました。そこで、収集したデータをリアルタイムで視覚化する機能を追加し、スタッフ全員でその情報を共有することができるようになりました。

このアプローチは、使いながら必要とされる機能だけを追加していくことで、現場で実際に必要とされる機能に絞り込むことができました。結果として、現場に本当に必要なものだけを盛り込んだ、極めて効率的なアプリが完成しました。

さらに、このシステムの導入により、67歳のベテラン職人さんも含め、誰もが簡単にスマホを使って作業記録をするようになりました。これまでの手書き作業が、スマホでの簡単な操作に置き換わることで、作業効率が大幅に向上し、システムはすぐに現場に定着しました。

また、このシステムを使用することで、リアルタイムに誰が何をしているかを把握できるようになり、その情報をタブレットに表示して現場で共有することにより、生産性が20%向上しました。このような透明性の高い作業環境は、スタッフ間での競争意識を促し、結果として全体の作業効率を向上させることに成功しました。

この経験から、「これは市場に出せる商品ではないか」という考えに至り、開発パートナーであるサンエンジニアリングさんと共に、2020年4月から外販を開始しました。プレス加工受託を主業としていた我々にとっては、自社商品を持つのはこれが初めてのことでした。

<日報&工数管理アプリ:スマファクの誕生>

サンエンジニアリングさんと我々は、元々自社製品を持たない下請けプログラム加工のメーカーでした。しかし、自社商品を持つことになり、その商品がアプリであるという事実に、最初は戸惑いました。販路が全くなく、「どうやって売っていくのか」という大きな課題が立ちはだかりました。

サブスクリプションモデルを導入し、月額2000円で利用できる料金体系を設定しました。これは、プレス加工とは全く異なる新たな事業の立ち上げを意味しました。しかし、私たちは販売の経験がなく、まさにゼロからのスタートでした。「チラシを作らなければ」「カタログを準備しなくては」といった基本的なことから始めました。そして、現代のマーケティング手法であるYouTubeやGoogle広告へと進出しました。

このプロセスで、私たちは大きな気づきを得ました。製造業で長年働いてきた私たちは、YouTubeやオンライン広告などを「やらない」と決め込んでいました。しかし、製造業以外では、小さな花屋さんでさえもインターネットのツールを活用しているのを見て、「製造業だけが遅れている」と痛感しました。

そこで、日報アプリの紹介に乗り出し、YouTubeに動画を投稿するなどして、その使い勝手の良さをアピールしました。このアプリは、現場でスマートフォンを使ってQRコードをスキャンするだけで、誰がどの機械で作業を開始したかを瞬時に記録できるように設計されました。この簡

単さが、製造現場での定着を可能にしました。

また、このアプリによって、インターネット上で「いつ、誰が、何をしたか」を一覧で確認できるようになりました。我々は広告費をかけることができないため、このような機会を通じて口コミで徐々に認知を広げ、東大阪近郊での導入企業を増やしていきました。今では80社に導入いただいております。

私たちのアプリは製造業界に留まらず、病院や介護施設など、日々の活動を記録する必要がある職場にも広がりを見せています。特に介護施設では、年配の方々が多く働かれているため、できるだけ簡単なシステムが求められており、私たちのアプリがそのニーズに合致しました。現在、80社の導入実績があり、このシンプルさが幅広い業界で評価されていることを嬉しく思います。

さらに昨年、私たちの取り組みは経済産業省のDX白書に掲載され、その内容が広く周知されました。この白書では、DXにおける課題とその対応、そしてアジャイル開発についての私たちのアプローチが紹介されました。このことがきっかけとなり、プレジデント誌が主催する、1泊2日の合宿セミナーの講師として招かれることになりました。参加費が60万円という高額なこのセミナーには、日立製作所の副社長やパナソニックの副社長など、そうそうたる顔ぶれが参加していました。そんな中、町工場出身の私が、どのような話をするのか、非常に緊張しましたが、このようなチャレンジも新たな経験となりました。

また、NHKに取り上げていただいたことで、放送当日から電話やメールでの反響が非常に大きかったことも記憶に新しいです。

私たちの旅はプレス業から始まり、アプリ販売、そしてさまざまな業界へと拡がる多様な経験を通じて、予想もしなかった相乗効果を生み出しています。データベース化という進歩は、私たちの製造データを競争力に変えてくれる可能性を秘めており、エコやCO2排出量の観点からも、これまで以上にデータの重要性が高まっています。特に、エネルギー効率の良い製造プロセスへの移行が求められる現代においては、データが不可欠な役割を果たします。

私たちの取り組みが、異業種である病院や介護施設にまで及ぶこと、そして経産省のDX白書に掲載されたこと、さらには高額なセミナーで講師を務めるまでに至ったことは、私たち自身が最も驚いている事実です。この道のりは、製造業界の可能性と、革新を恐れずに新しい挑戦をすることの大切さを教えてくれました。

また、スマートフォンを活用したコミュニケーションツールとしてのLINEの使用や、アプリを通じたデータ収集・活用は、現場作業を効率化し、チームワークを促進する大きな力となっています。これらの技術を活用することで、年齢層の異なる従業員が共に働きやすい環境を実現できるようになりました。

私がここで皆様にお伝えしたいのは、製造業界がこれまで「遅れている」と自己批判してきた部分が、実は未来への大きなチャンスを秘めているということです。私たちは、固定観念に縛られず、常に新しい技術やアイデアに開かれた姿勢でいることが重要です。今後も、技術の進化を取り入れ、新たなビジネスモデルを模索し続けることで、製造業の新しい地平を開拓していくつもりです。

代が変わる約6年前、私たちにはただ不安と危機感しかありませんでした。将来への確信を持てずにいた私たちは、まるで徐々に温度が上がる湯の中のカエルのように、状況の変化に気づかずにいる自分たちを恐れました。その危機感が、プレス業だけではない新たな挑戦を求める大きなきっかけとなりました。

この挑戦の中で、アプリ開発という新たな道を歩み始めた私たちは、想像以上のビジネスチャンスに出会いました。そして、売り歩いている中で大きな案件が舞い込んできた時、30台ものスマホ端末が必要になり、これを機にソフトバンクさんと協業を始めることになりました。代理店契約を結び、法人部隊との協力体制を築くことで、新たなビジネスモデルを構築しています。

<協業の広がり>

また、データの提供や活用により、AI技術にも注目しています。東大ベンチャーとの協業を通じて、持ち前のデータを活かした新たな取り組みを進めており、これまで接点のなかった分野とも関わることができるようになりました。

さらに、セールスフォースなど、私にとって未知だったサービスを活用し、顧客管理や営業支援を強化しています。これらの経験は、プレス業での長年の業務だけでは得られなかった貴重な学びとなっています。

私たちの旅には、まだまだ驚きの展開がありました。特にセールスフォースの営業マン、アジアでトップセールスを誇る凄腕の方が、私たちのアプリに大きな可能性を見出してくれたことです。セールスフォースは、他の業界では既に高いシェアを誇っていますが、最後の未開の市場として製造業を見ていました。私たちのアプリを見たその営業マンは、「こんなキャッチーな商品はない」と絶賛し、私たちとの協業を強く望んでくれました。

これにより、私たちはセールスフォースとの新たな協力関係を築き、製造業への販路拡大に向けて歩みを進めています。その営業マンの力強いサポートと売り込みにより、製造業界での私たちのプレゼンスが着実に高まっています。

また、製造業界がDXやデジタルリテラシーにおいて遅れを取っている現状も、私たちにとっては新たなチャンスとなりました。私たちのシンプルで直感的に使えるアプリが、このような状況を打破する手段として評価されているのです。

さらに、SMBCコンサルティングからも関心を寄せられ、日報データを活用したコンサルティングにおいて、私たちのアプリが有効であるという認識が広がっています。これらの出来事は、私たちのアプリが多方面でその価値を発揮し得ることを示しています。

私たちの挑戦は、製造業界に留まらず、さまざまな業界に新たな価値を提供し続けています。そして、これからも私たちは夢を大きく持ち続け、さらなる成長と展開を目指していきます。製造業界の未来に、新しい風を吹き込むために、これからも私たちの挑戦は続きます。

これまでの私たちの旅は、単なる製造業からの脱皮だけに留まらず、全く新しい領域への挑戦の歴史でもあります。コンサルティング業界や、リコージャパンのようなデジタルツールを提供する企業との協業を通じて、私たちのアプリがさまざまな業界で新たな価値を生み出していることを実感しています。これらの経験は、製造業だけではなく、幅広いビジネスシーンでの可能性を私たちに示してくれました。

特にセールスフォースの営業マンとの出会いは、私たちにとって大きなターニングポイントとなりました。製造業がデジタルトランスフォーメーションの最後のフロンティアであるという彼の言葉は、私たちのアプリが持つ可能性を改めて確信させてくれました。そして、その営業マンの熱意により、今や私たちは全国規模での展開を目前に控えています。

この3年間、コロナ禍の中で社長としての役割を果たし、新しい挑戦を続けてきたことは、私にとって非常に大きな経験でした。今振り返ると、新しい技術やマーケティング戦略に挑戦したことが、今日の私たちの成功に繋がっていることを実感します。かつては、Google広告やYouTubeなどのデジタルツールに対して違和感を覚えていましたが、今ではそれらを活用しない手はないと感じています。

この経験から学んだ最大の教訓は、変化を恐れず、常に新しいことに挑戦し続けることの重要性です。世の中はあっという間に変わります。新しい技術やアイデアに開かれた姿勢を持つことで、私たちは時代の波に乗り遅れることなく、さらにはそれをリードすることさえできるのです。

最後に、私たちの旅はまだ終わりません。これからも、新しい技術やアイデアを取り入れ、日本の産業に貢献していくことを目指しています。皆様のご支援とご理解をこれからも心よりお願い申し上げます。本日は、私たちの挑戦の軌跡にお付き合いいただき、誠にありがとうございました。