
少子高齢化が進む日本、そして中小企業での、とりわけものづくりにかかわる新規採用は厳しい状態が続いています。このような中で顔国人雇用が必須の傾向がみられます。OSKグローバルビジネス・プロモーション(GBプロ)では先駆的な外国人活用を行っておられる大阪府豊中市の大福鉄工所の大福社長においでいただきお話をいただきました。
以下その概要を取りまとめた報告です。
当日の大福社長の席上講演様子は、動画をご覧ください。→https://youtu.be/gmn7lz9-td8
同社のホームページ→http://ofuku-iron.com/
難削材加工技術と外国人高度人材の融合 ~大福鉄工所の挑戦と未来~

日本の製造業が少子高齢化や技術継承の難しさに直面する中、大福鉄工所は創業76年の歴史の中でこれらの課題に挑み続けてきました。戦後間もない時期に「難削材加工技術」を確立して事業基盤を築いた同社は、現在、外国人高度人材を積極的に活用することで新たな成長を遂げています。
この記事では、同社の歴史、技術革新、人材戦略を総合的にご紹介し、中小企業が未来を切り開くためのヒントを探ります。
戦後の混乱期に生まれた挑戦 ~難削材加工技術の開発~
大福鉄工所の歴史は、昭和23年にたった1台の工作機械を頼りに創業したところから始まります。事業の転機は昭和26年、大手企業クボタから依頼された特殊材料の加工でした。
当時、ニッケルやクロムを含む非常に硬い合金の加工はどの企業も成功しておらず、難削材とされていました。創業者は、山中で見つけた採掘工具の刃をヒントに、独自の工夫で加工機械を改造し、依頼を見事に完成。

これが同社にとって最初の大きな成功となりました。この挑戦が評価され、「難削材加工のパイオニア」としての地位を確立。その後、耐熱性や硬度の高い特殊材料を扱う技術を磨き上げ、事業基盤を築きました。
現在でも、同社は原子力プラント部品、自動車ホイール、船舶修理部品など、精度と技術力が求められる製品を手掛け、多様な業界から高い信頼を得ています。
人材不足という壁 ~技能実習生から高度人材への転換~1990年代末、同社は新たな課題に直面します。日本の若者の製造業離れが進む中、人材不足が深刻化したのです。採用活動を行っても応募はほとんどなく、現場の運営が困難になりつつありました。
そこで試験的に導入したのがベトナム人技能実習生の活用でした。彼らは日本語に不慣れながらも熱心に働き、短期間で技術を習得。しかし、技能実習制度では3年で帰国する必要があり、経験を積んだ人材が現場を離れる状況が繰り返されました。この制約を克服するため、同社は「高度外国人材ビザ」を活用した新たな採用方針に転換します。
高度外国人材ビザを通じて採用されたベトナム人技術者は、全員が工科大学卒業者であり、母国での実務経験を持っています。そのため、入社後すぐに戦力として活躍できるのが大きな特徴です。

さらに、彼らの向上心は非常に高く、日本での技術習得を将来の起業につなげたいという明確な目標を持つ人も少なくありません。例えば、日本で培った技術を活かしてベトナムに工場を設立した元従業員もいます。このように、技術の習得と所得向上への意欲が、仕事の質や効率性に大きく反映されています。
彼らは加工だけでなく、CADを使った図面設計、プログラム作成、機械操作まで一貫して担当。工場の公用語がベトナム語であることもあり、日本語に依存せず高い生産性を発揮しています。

工場長が主導する自社採用体制
大福鉄工所が外国人高度人材を活用する上で注目すべき点は、工場長を務めるベトナム人技術者の存在です。彼は現場を統括するだけでなく、ベトナム現地での人材採用プロセスも主導しています。


採用面接、書類準備、ビザ取得手続きまでを自社で行う仕組みを構築。これにより、外部業者に頼らず、コストを抑えつつ効率的な採用が実現しました。この採用体制は、他の中小企業にとっ
ても参考となるモデルと言えるでしょう。
大福鉄工所の取り組みは、次のような点で中小企業にとって学びとなる事例です。
- 技術の伝承と進化
創業期に培った難削材加工技術を外国人高度人材が受け継ぎ、進化させています。 - 高度人材による即戦力化
工科大学卒業者の採用により、入社後すぐに高難度の業務に対応できる体制を整備。 - 採用の効率化
自社で採用プロセスを内製化し、採用コスト削減と柔軟な計画を実現。 - 技術習得意欲の活用
技術向上への意欲が高い人材を受け入れることで、業務の質と効率が向上。
技術革新と人材活用が切り開く未来
大福鉄工所の挑戦は、単なる人材不足解消にとどまりません。同社は、外国人高度人材の力を活用することで、ものづくりの現場に新たな価値を創出しています。難削材加工技術という揺るぎない基盤を軸に、グローバルな視点で経営を展開するその姿は、多くの中小企業にとって指針となるでしょう。
76年の歴史を持ちながら、常に時代に適応してきた大福鉄工所。これからの挑戦が、日本のものづくりの未来をどのように形作っていくのか、大いに注目されます。
<以下は、Q&Aです>
司会者:
「では、最初の質問ですが、司会者からさせていただきます。外国人労働者、特にベトナム人を大勢採用されているとのことですが、運営面でどのような工夫や苦労があったか教えていただけますか?」
大福社長:
「最初の頃は正直、ベトナム人と日本人が一緒に働く環境で、文化や考え方の違いからいろいろ

な摩擦がありました。例えば、日本人は細かい指示を求めたり、進め方に慎重さが求められるところがある一方で、ベトナムのスタッフは自主的に考えて進めることを好む傾向があります。その違いが業務上のトラブルにつながることもありましたね。
そこで、私たちは少しずつ現地の考え方ややり方に合わせて運営スタイルを変えることにしました。具体的には、ベトナム人のスタッフに権限を渡し、責任を持ってもらうようにしたんです。自分たちで判断する力を育てることが大切だと思い、あえて細かく指示せず、任せるようにしました。もちろん最初は不安でしたが、結果として彼らは期待以上に合理的な進め方をしてくれました。
また、日本人スタッフとの混在については、いろいろと問題がありましたね。特に年配の日本人スタッフがベトナム人をどう受け入れるかで苦労しました。彼らの文化や働き方を受け入れられず、不満が生じることも多かったです。そこで、最終的には職場全体をベトナム人主体に変えて、スムーズに回る体制にしました。時間はかかりましたが、これが良い結果につながったと思っています。」
参加者
「ベトナム人労働者の採用には手続きや費用の面で苦労されることも多いと聞きますが、その辺りはどうでしょうか?」
大福社長:
「はい、採用手続きには確かに手間も費用もかかります。例えば、ビザの発行手続きでは、日本とベトナムの両方の紹介会社を使うと、費用は50万円ほどかかることがあります。でも、最近は手続きがスムーズになってきていて、ベトナム語で対応できるサービスや資格講習も増えてきたのは大きな助けですね。
それから、手続きが完了した後も、日本の職場環境に慣れるためのサポートが必要です。特に初めて来日する人には、日本の労働環境や文化に馴染むための研修をしっかり行っています。こうした準備があれば、働き始めてからもトラブルが少なくて済みます。」
参加者:
「ベトナム人の方々が途中で離職してしまうケースもあると聞きました。その理由について教えていただけますか?」
大福社長:
「そうですね。離職の理由で多いのは、やはり給与や待遇です。他の企業の方が良い条件を提示したり、ベトナム国内で十分な収入が得られるようになってきたことが原因です。最近では、ベトナムの経済成長もあって、国内で働くことを選ぶ人が増えています。
また、ネットワークの問題もあります。仲間同士で情報を共有しやすくなっていて、『あの企業は給料が高い』とか、『もっと働きやすい職場がある』といった噂が広まると、それに引っ張られることがあります。ただ、そうした離職を完全に防ぐのは難しいですが、うちの場合はベトナム語が使える環境を整えたり、働きやすい職場づくりに力を入れたりして、少しでも満足度を高める努力をしています。」
参加者:
「夜間の作業や安全面について何か工夫されていますか?」
大福社長:
「はい、夜間作業は特に注意を払っています。例えば、夜遅くまで人が作業に携わるとどうしても疲労が溜まってしまうので、できるだけ自動化を進めて、機械が動くようにしています。また、工場長がスタッフの疲労状況を直接確認して、無理がないように配慮しています。さらに、安全面の対策も重要で、定期的に設備を点検したり、スタッフに安全教育を行ったりしています。これによって、事故のリスクを減らしながら効率的な運営を実現しています。

司会者:
「日本の中小企業は人材不足と言われていますが、外国人雇用をもっと広げるべきだという意見もありますよね?」
大福社長:
「そうですね。日本の中小企業は人材不足を抱えながら、なかなか外国人を採用するという一歩を踏み出せないケースが多いと感じます。ただ、私たちが経験してきたことから言うと、一度やってみればそれほど難しいことではありません。もちろん最初は手間もかかりますが、慣れればプロセスも簡略化できますし、現場の戦力として非常に頼りになるんです。
これからも、私たちが経験して得たノウハウを活かして、他の企業にも外国人雇用を広げるサポートをしていきたいと思っています。」