ワイヤーハーネスとおコメ販売:二刀流経営。            そして主婦の在宅ものづくり支援

一般社団法人OSKグローバルビジネス・プロモーション(GBプロ)では、隔月に先駆的な活動を行っている中小企業のかたをお招きし、お話しをいただいています。

今回は神戸市東灘区にある電子機器製造有限会社吉井電機の代表取締役 三浦泉様に発表をいただきました。同社は小ロット対応にその力を発揮し、従業員対応も女性の立場を組み込んだ在宅作業管理を取り入れられています。更には地域貢献を兼ねてお米の販売も行われるという特徴ある事業を展開されています。

以下は発表いただいた概要です。

当日の発表動画は→https://youtu.be/f15urw3PhWg

同社のwebは次の通りです。https://www.yoshiidenki.co.jp/

ご挨拶

ご紹介にあずかりました、有限会社吉井電機の代表取締役、三浦泉と申します。
本日はどうぞよろしくお願いいたします。


会社概要と沿革

弊社は神戸市東灘区深江南町にございます。社員は12名ほどの小さな会社です。設立は1985年3月3日で、今年でちょうど40周年を迎えました。

事業内容は「電気機器製造」と記載しておりますが、主には配線や組み立てを中心に行っております。近年はAIやロボット化が進んでおり、それに伴ってケーブル関連のお仕事が大変多くなっております。

また、後ほどご紹介しますが、4年前からは「お米の販売事業」にも取り組んでおります。

沿革について少しお話しします。

創業は1985年、父が立ち上げました。阪神大震災で一度全壊しましたが、父は若くエネルギーもあり、すぐに再建しました。
しかしその後、父が体調を崩し、経営も不振に陥りました。

私が会社を継いだのは2017年です。実を言うと、あまり深い理由ではなく「1代目が潰すより、2代目が潰した方がいいだろう」と思ったのがきっかけでした。銀行さんから「3か月だけ猶予を与える」と言われ、その間にできることをやってみようと決意して引き継ぎました。

さらに銀行には「3年やってダメなら身を引く」と宣言しました。ところが3年目にV字回復を果たすことができました。そこで勢いに乗り、お米事業も始めることになったのです。


お米事業の始まり

きっかけは知人から「余っているお米を食べてみないか」と勧められたことでした。息子が3人おり、とにかくよく食べるので試してみました。するとそのお米は水分が多く、壊れかけの炊飯器でもふっくらと炊き上がり、とても美味しかったのです。

その後、子どもたちを連れて田植えを手伝いに行った際、農家の方から「先祖代々の土地を守りたいが、跡継ぎがいない」という話を聞きました。私たちもモノづくりをしていますので、分野は違えど同じ“ものづくり”の人間として心を打たれ、「それなら販売を手伝わせてもらえないか」と提案しました。こうして「寅二郎米」という名前で販売を始めました。

「寅二郎」という名前は、阪神ファンだからではなく、単に私が虎が好きだからです。


主な取引先と事業内容

父の代から鉄道関係の仕事が中心でした。主要取引先は、三菱電機エンジニアリング、JR西日本テクノス、カコテクノス、旭光電機、ニッシン、古野電気など、現在は計16社とお取引があります。

鉄道分野では、運転席の下にある制御盤や軽電気盤、車両床下にある大きな箱の中に収められた何千本ものハーネスを組み立て、取り付けています。
また最近は、船舶や陸運用の通信系機器も増加しており、制御盤・軽電気盤の需要が高まっています。

かつては医療機器が売上の8割を占めていました。しかし規制強化により海外輸出が困難になり、現在は1割未満に減少しています。その分、鉄道や通信へ事業の軸足を移してきました。


設計分野への展開

従来は「図面をいただいて製造するだけ」でした。しかしそれでは作業した分のお金しかいただけず、検討や検査にかかる時間をまかなうことができません。

そこで「設計段階から関われば、自分たちの正規の金額をいただけるのではないか」と考えました。ただし、設計者を雇う余裕はありませんでした。そんなとき展示会で出会った、近隣の若い設計士の方と協力し、設計から製造まで一貫対応できる体制を整えました。

結果として、案件単位で数百万円規模の仕事を受注できるようになり、大きな成長のきっかけとなりました。


強みと特色

弊社の強みは以下のとおりです。

  • 高度な配線技術
    100本から1000本規模の制御盤配線を美しく仕上げることができます。自社ながら芸術的だと思うほどです。
  • 認定資格の取得推進
    三菱電機の「はんだ試験」「圧着試験」「二次試験」を、社員だけでなくパートさんにも取得してもらっています。資格取得者には手当を支給し、向上心につなげています。
  • 小ロット・短納期対応
    手作業中心のため、急な設計変更や一点ものにも柔軟に対応できます。
  • 共同作業体制
    一人ひとりの得意分野を活かし、複数人で案件を進めます。これにより品質が安定し、工程間でコミュニケーションも生まれ、社内の雰囲気も良くなっています。

課題と取り組み

大きな課題は「人手不足」と「最低賃金の上昇」です。工場のキャパシティが限られているため新規雇用が難しく、内職や在宅ワークに大きく依存しています。

しかし「年収130万円の壁」や、育児・介護といった事情によりフルタイムで働けない方が多いのが現状です。それでも、在宅でも資格を取り、品質の高い仕事をしてくださる方々のおかげで成り立っています。


地域とのつながりと米販売の意義

お米の配達では、高齢者との交流が生まれています。電球の交換やドアの修理を頼まれることもあり、地域に根ざした活動につながっています。

当初は「電気屋が米を売るのか」と笑われましたが、最近の米不足で「先見の明があった」と言われるようになりました。価格も農家の意向を尊重し安価に設定したため、今年は3月で完売しました。

また「寅二郎」をキャラクター化し、キーホルダーやシールを配布しています。子どもたちにモノづくりや農業を身近に感じてもらえるよう工夫しています。


まとめ

有限会社吉井電機は、電気機器製造を中心に、お米販売を通じて地域とのつながりも深めております。
人手不足や労働環境という課題に直面していますが、在宅ワークや資格取得支援などの工夫で前進しています。

小さな会社だからこそできる柔軟さと人とのつながりを大切にし、これからも社会に必要とされる企業を目指してまいります。

本日はご清聴ありがとうございました。


Q&Aセッション

司会者

「この前、打ち合わせで伺ったときにお聞きしましたが、御社は“内職の方”を活用されているそうですね。内職の方は在宅勤務という形ですよね。在宅でできる仕事をママ友のつながりなどで探してきて、しかも年収130万円の壁を考慮してうまく取り組まれていると伺いました。

電機関連の会社でそうした事例はあまり聞いたことがありません。御社は芦屋の南側という高級住宅街の近くに立地されていて、工場を広げるにも限界があります。そのなかで外部の労働力を取り込み、工夫している点がとても印象的でした。

商品自体は他社にもありますが、“働きたいけれど働けない人”にチャンスを作っているという意味で、非常に意義深い取り組みだと思います。この点について、もし補足があればぜひお願いします。」


三浦(回答)

「そうですね、本当に内職の方々には助けられています。現在5人ほどの方が在宅で作業をしてくださっており、当社にとって大きな戦力です。

ご自宅で介護をされていて外に出られない方、障害を持ったお子さんを育てておられる方、副業として時間を使いたい方、事情はさまざまです。特に最近は“介護をしながら家でできる仕事”を探す方が多いですね。

作業は簡単なものだけではありません。線切りや圧着など、認定資格を取得していただき、ご自宅で製品を仕上げて納品していただいています。納品のときに直接お会いすると、“家にずっといるより、受け渡しで外に出るのが楽しい”とおっしゃってくださる方もいます。

私もそれを聞くと、ただの労働力補充ではなく、その方々にとっても生活の張り合いになっているのだと強く感じます。双方にとって価値がある取り組みであり、今後も“少しだけ働ける時間がある人”に協力していただきながら、事業を続けていきたいと思っています。」