6月18日(火曜日)(一社)大阪府産業支援型NPO協議会主催、大阪府商工労働部後援で協働型ロボットの中小企業における導入と活用と題しミニシンポジュウムが開催されました。

そのうち、ロボット導入の先端的事例として株式会社サンコー技研の実績と戦略を同社田中敬社長より披露していただきました。
以下はその概要です。
なお、報告の状況の動画はyou tubeをご覧ください。
<事業沿革>

会社は東大阪、八尾にあり、1976年からプレス加工を行っています。創業者の父から引き継いで3年目になります。初期はアルミの筐体ケースの加工を行い、80年代にはビデオやテレビの基盤の打ち抜きを開始しました。90年代には大型テレビのシート製作も手掛け、現在は交通系ICカードのフィルム基盤の内抜きを担当しています。ロボットを使ったフィルム基盤の自動化にも取り組んでおり、このロボットは±5μの精度で動き、金型の上の製品をハンドリングします。現在、交通系カードの需要は減少しているため、新たにパワー半導体の放熱基盤にロボットを活用して全自動化を進めています。

最近では作業時間管理アプリも販売していますが、今日は割愛します。設備導入には「ものづくり補助金」を活用しており、ロボット開発時は自力で取り組みました。その際の苦労も紹介したいと思います。
当社は品質管理体制が整っており、市場クレームゼロを維持しています。試作から量産までワンストップで対応できるのが強みです。高精度なロボット装置も開発していますが、需要を探している段階です。
隣にはクリーンルーム工場があり、半導体の放熱基盤の打ち抜きを行っています。微細加工工業会に所属し、髪の毛サイズのお城や小さいギアなど、ユニークな試作品も作っています。
<最近の企業活動>
最近の活動について説明します。本題ではありませんが、紹介します。


大手自動車メーカーの燃料電池車の樹脂部品や、テスラの案件でロボットを使った工法を提案しました。テスラの案件は受注には至りませんでしたが、日本代表としてコンペに参加し、ロボット活用に繋がっています。

ロボットを使ったプレスシステムの写真があります。この赤い装置の隣にロボットがあり、人間では危険なプレス金型内の作業をロボットが行います。ロボットは±5μの精度で製品を動かします。
このシステムで作る部品は、周囲にメモリが打ってある丸いワッシャー形状の部品です。サーボモーターの軸裏に取り付けられ、モーターの回転数や角度を読み取るエンコーダースケールになります。これを正確に中央に打ち抜くことで、軸にはめた際にブレが生じず、正確に読み取れます。このプレス装置は現在、量産採用されています。パナソニックのサーボモーターには全て弊社の部品が搭載されることを期待しています。
さらに、ロボットを使った加工では、50μの幅で精密に動かし、まるで千切り包丁で千切りするようなイメージで作業します。これは次世代の導波光路基盤と呼ばれる透明なフィルムの加工にも応用され、カメラで電極の位置を読み取り、精確に打ち抜く技術を活用しています。
このように、細かく精密な動きをロボットが行うことで、様々な部品の製造や加工を行っています。
<作業時間アプリについて>
ちょっとこれ余談ですが、作業時間管理アプリを開発、販売していますが、これを使い全数、生産の加工履歴をデータ化することに取り組み、6年前、自社開発したものに取り組んでいます。 作業時間管理アプリはみんな見れるんです。現在、何をやっているかがわかります。これ便利やから売れるん違うかな、ということで、4年前から外販事業化しております。
こちらも80社ぐらい入れていただいて、こっちはこっちで頑張っていきいこうかなと思っております。
<当社のロボット導入に対するきっかけ>
町工場目線でロボットの導入についてお話します。弊社は2008年にロボットを導入し、以来10年以上にわたり量産に活用しています。2018年には±5μの高性能ロボットも開発し、現在は事業化を目指しています。

導入の経緯ですが、弊社は2001年からSUICA、2006年からICOCA、2008年からPASMOに関連するカードの仕事を行い、ピーク時には月産300万枚を達成しました。当時は24時間稼働し、夜間の人員も含めて50~60人で対応していましたが、収益が上がらず悪循環に陥っていました。
2000年代初頭、中国人留学生を夜間にアルバイトとして雇い、優秀な人材が多かったため、仕事は順調に進んでいました。しかし、2008年の北京オリンピック以降、留学生の質が低下し、仕事に対する真剣さが失われました。これにより、品質の問題が懸念されるようになりました。
この状況下で、手作業で行っていたプレス作業の自動化を考えるようになりました。24時間体制で作業を行い、品質を保つためにロボット導入を検討しましたが、当時はシステムインテグレーターが少なく、相談先も不明な状況でした。それでも、ロボット導入の必要性を感じ、試行錯誤しながら取り組んできました。
<ロボット導入の検討と困難、リスクの取り込み>

2008年当時、システムインテグレーターがほとんどおらず、ロボット導入の相談先が見つかりませんでした。しかし、東大阪の仕事の種類と情報の多さという強みを活かし、ロボットを扱い始めた自動機メーカーの噂を聞きつけて相談に行きました。そこでの見積もりは3000万~4000万円と非常に高額でした。
どうしてもというロボット導入の必要性を強く感じていたため、装置メーカーに基本的な部分だけを作ってもらい、現場での立ち上げ調整は自社で行うことにしました。これにより、装置メーカーとリスクとコストを分担し、受け入れてもらえるようになりました。お互いに信頼関係を築きながら、試行錯誤を重ねて装置を立ち上げました。
導入したロボットは300万円、カメラ90万円、位置決めソフト60万円、架台を含めて合計約800万円で実現しました。これにより、他社の見積もりよりも大幅に低いコストで導入することができました。
ロボットの導入により、プレス金型内の作業が自動化され、24時間体制で高精度な作業を行うことが可能になりました。これにより、品質向上と生産効率の改善が図られ、さらなる事業展開の基盤が整いました。
<そのメカニズム>
これがA4シートを全自動でアラインメントし、打ち抜く装置です。左側にロボットがあり、金型に製品を投入し、全自動で打ち抜かれた製品を回収します。全自動化により人的生産性が向上し、作業の合理化も実現しました。(動画を参照ください。)
以前はガイド穴を開けるために別の人が1工程かけて2箇所を空けていましたが、ロボットプレス化により自動で位置を決めるためガイド穴が不要になりました。これにより作業が効率化され、利益向上につながりました。
初期には立ち上げに苦労し、不良品が多発しましたが、技術的な知見を積むことで安定稼働を実現しました。自社でロボットを操作し、安定稼働の方法を見つけ、品質が安定したため、2011年には2台目を導入しました。このプロセスを外部に任せると高コストになるため、自社で取り組むことが重要でした。
このロボットプレスシステムでICカードの打ち抜きを行い、1億枚中7000万枚~8000万枚を生産しました。量産には成功しましたが、精度は±100μにとどまりました。それでも、全自動化により大量生産が可能となり、品質と効率の両面で大きな成果を上げました。
<開発ロボットシステムの外販>
世の中にはロボットプレス装置がほとんどなく、YouTubeに動画を上げると多くの問い合わせがありました。「100μでは足りない、もっと高精度が欲しい」という要望が多く、次世代機の開発に取り組みました。この装置は2018年にものづくり補助金を使って開発され、特許も取得しました。カメラを内蔵し、製品を見ながら動かすことで、±5μの精度を実現しました。
さらに、2022年には精度を±1μまで向上させることができ、経済産業技術賞を受賞しました。この装置はアライメントマークをターゲットにしてカメラが認識し、ロボットが動かす仕組みです。ロボットは動かしては測定を繰り返し、最終的に0.0006の同心度を達成しました。
具体的には、スタートを押すとロボットがシートを取りに行き、動かして測定、動かして測定を繰り返します。現在のタクトでは5回繰り返し測定し、5μ以内、1μ以内に収束した後に加工を開始します。このプロセスにより、高精度かつ安定した加工が可能となりました。
この高精度ロボットシステムにより、多くの相談や自動化の問い合わせが寄せられるようになりました。「こんな加工ができませんか」「こういった自動化が可能ですか」という問い合わせが増えています。当社はプレス屋ですが、ロボット加工に関する相談も増えています。
(相談事例省略)
現在、ロボットプレスシステムを販売しています。多くの大手メーカーと話を進めていますが、大手メーカーさんでは、設備改善が進んでいません。プレス屋はガイド穴をなくし、自動でロボットで打ち抜きを実現したいのですが、大手でも実現できていません。
弊社のロボットを導入すれば、全てロボットが作業を行います。同社ではインドネシア工場や他の工場で数十台の導入が進んでおり、自動化を当社が支援しています。
外販については、事業化の見通しが立ち、展示会に出展する機会も増えています。展示会では安価な装置を中心に出展し、プレス受託がメインですが、自社オリジナルプレス装置のPRにもなっています。
<町工場目線からのロボット導入に対する気付き>
最後に、町工場目線からロボット導入に対する気付きを共有します。以下の3点です。
- ロボット導入の変化: 10年、15年前のロボット導入と現在の協働ロボット導入などが出てきている状況ではスタンスが変わっています。以前は大量生産を自動化するためのロボット導入が主流でしたが、現在は製造現場の付加価値を高めるための導入が進んでいます。今の流れでは、技術革新に取り組むことで企業の課題解決型の組織を目指し、ロボット導入を進めるようになっています。ロボットを活用することで、製造現場の付加価値を高める取り組みが増えてきました。
- 導入の難しさ: 1台のロボットを導入するのは比較的簡単ですが、全体的な導入には時間がかかります。TMロボットのように短時間で導入できるものもありますが、必要になってからでは遅いです。ロボットの導入には準備と時間が必要であり、戦略的に早めに1台導入しておくことが重要です。導入後の立ち上げや調整には多くの時間がかかるため、あらかじめ計画的に導入することが求められます。
- 中国製ロボットの影響: 超格安で高性能な中国製ロボットが普及しており、日本のロボットメーカーが危機に直面しています。AIの進化と同様に、ロボットをどう利用するかがビジネスの成否を左右します。中国製ロボットは価格が安く、多くの企業が導入しています。日本のロボットメーカーは、この状況に対応するため、より高性能で付加価値の高いロボットを提供する必要があると感じます。
<テスラ案件の経験>

テスラの案件で、中国、韓国、台湾と競争し、日本企業のロボット案が採用されなかった経験があります。具体的には、アルミの薄いシートを加工する案件で、他国はレーザー加工を提案しましたが、弊社はロボットを使ったプレス加工を提案しました。結果、テスラは自社開発のレーザー加工機で対応し、弊社の案は採用されませんでした。しかし、この経験から、ロボットをどう利用するかが重要であり、町工場にも多くのチャンスがあることを学びました。
この案件では、レーザー加工に時間がかかるため、多くのレーザー加工機を並べて対応するという方法が取られました。一方、弊社はロボットによる効率的なプレス加工を提案し、競争力を発揮しました。この経験から、独自のアイデアと工夫で勝負できる場面が多いと感じています。
町工場でも、これからは人手に頼らず、ロボットを効果的に活用することで新たなビジネスチャンスを掴むことができると思います。中国製のロボットを大量に並べる方法だけでなく、独自の工法やシステムで競争力を発揮できると考えています。
企業規模と事業レベルは人員で表現されることが多かった時代からロボットを代表とした大きな変化が出てくる時代になります。中小企業にも大きなチャンスが訪れてきています。
以上が、町工場目線からのロボット導入に対する気付きです。本日の内容が皆様のお役に立てれば幸いです。また、日本アプリの活動もよろしくお願いいたします。
本件に対する問い合わせは https://sankogiken.com/contact/
(株)サンコー技研 代表取締役社長 田中 敬 氏まで