女性の力を社会につなぐ新しい働き方への挑戦
かつてに比べ、女性が活躍できる場は大きく広がり、その能力や専門性は多くの分野で高く評価されるようになりました。企業経営、企画開発、営業、IT、デザインなど、さまざまな領域で女性の存在感は年々高まっています。
しかしその一方で、結婚、出産・育児、さらには親の介護といった人生の大きな転機に直面した際、能力や意欲がありながらも第一線から離れざるを得ない女性が少なくありません。これは個人にとってだけでなく、社会全体にとっても大きな損失と言えるでしょう。

OSKグローバルビジネス・プロモーション(GBプロ)では、このたび株式会社team.mの代表取締役である小谷氏をお招きし、同社が掲げる理念、在宅型組織運営の実情、そして女性が持続的に活躍できる社会の実現に向けた将来展望についてお話しいただきました。
以下は、その講演内容の概要です。
当日の講演動画は次のURLを開いて参照下さい。→https://youtu.be/c43HxgpvW2k
同社のホームページは→https://team-m-japan.com/
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はじめに ~舞鶴から生まれた新しい働き方の挑戦~
皆さま、こんにちは。舞鶴から参りました小谷明日香です。
私は京都府北部の舞鶴市を拠点に「株式会社team.m」を運営しています。今日は、私たちが取り組んでいる「人材不足に悩む企業」と「子育てや介護など時間的制約がある優秀な人材」をつなぐ新しいアウトソーシングの仕組みについてお話しします。
ありがたいことに、今年は京都女性起業家賞で最優秀賞をいただきました。過去の受賞者の多くが京都市内や宇治市など南部地域だった中で、京都北部から初めて最優秀賞を受賞できたことは、地域にとっても大きな励みになりました。

大企業のキャリアから地方へUターン
私は京都・宇治市出身で、神戸大学卒業後、東京のリクルートに入社しました。
約7年半勤務し、「タウンワーク」の全国展開や新規エリア立ち上げなどに携わりました。東日本大震災の際には東京本社で被災した経験もあります。
仕事は非常にやりがいがありましたが、東京での生活を続けるうちに、自分自身は京都の自然や人との距離感の近さを求めていることに気づきました。
そこで京都へUターンし、その後は京都府の事業として移住・定住支援に携わり、多くのUターン希望者や移住希望者の相談に乗る仕事を続けました。移住希望者と受け入れ地域の双方をつなぐ役割を4年間担当し、多くの人との出会いを経験しました。
出産をきっかけに見えた社会課題
転機となったのは第一子の出産でした。
それまで全国を飛び回りながら仕事をしていましたが、子どもが生まれると状況は一変します。保育園のお迎え時間があるため、東京出張も地方出張も難しくなりました。
私はその時初めて、
「子どもが生まれた瞬間に、能力がなくなったわけではないのに、第一線から外れざるを得ない人がたくさんいる」
という現実を実感しました。
これは私個人の問題ではなく、多くの母親や父親が直面している社会課題でした。
実際、内閣府の調査でも、出産前は正社員として働いていた女性の多くが、出産後にはパートやアルバイトへと働き方を変えざるを得ない状況が続いています。

能力はあるのに、時間や場所の制約によって活躍の場を失ってしまう――。
私はここに大きな可能性が埋もれていると感じました。
チームM誕生 ――「仕事を人に合わせる」のではなく「仕事を再設計する」
そこで立ち上げたのが「チームM」です。
一般的な人材派遣や人材紹介では、人を企業に送り込みます。しかし私たちは、人ではなく「仕事」を受け取ります。
企業から業務を預かり、その業務を分析し、分解し、再設計し、最適な人材チームで遂行する仕組みです。
現在、登録メンバーは約120名。その中心には17名のプロジェクトマネージャーがいます。

特徴的なのは、メンバーの多くが大企業出身者であることです。
日産自動車出身者、外資系企業出身者、流通業界出身者、翻訳者、映像制作経験者など、多彩なキャリアを持つ人材が集まっています。
彼らの多くは、
- 子育てを優先したい
- 地方で暮らしたい
- 配偶者の転勤に伴って移住した
- 介護と仕事を両立したい
といった理由で都市部の第一線を離れています。
しかし能力は決して失われていません。
私たちは、その力を企業の課題解決に活かしています。
チーム制だから実現できる安心感
チームMの最大の特徴は「チーム制」です。
通常の業務委託では、一人が担当すると、その人が休むと業務が止まります。
しかし私たちは一つの案件に複数人を配置します。

例えば子どもが熱を出したとしても、別のメンバーが対応できるため、業務は止まりません。
この仕組みによって、
- メンバーは安心して働ける
- クライアントは安定したサービスを受けられる
- 組織全体の生産性が上がる
という好循環が生まれています。
結果として、心理的安全性の高い組織になり、働く側も自発的に成長しようという意欲を持つようになりました。
「なんとなく忙しい」を見える化する
私たちの仕事は単なる事務代行ではありません。
企業から相談を受ける際には、まず1時間から1時間半ほどかけて現状を詳しくヒアリングします。
社長から
「なんだか忙しい」
「人が足りない」
「業務が回らない」
という相談を受けても、それだけでは本当の課題は見えてきません。
そこで業務を整理し、
- 何がボトルネックなのか
- 誰が判断すべき仕事なのか
- システム化できる部分はどこか
を徹底的に可視化します。
そして必要に応じてAIやSaaSを活用しながら、人がやるべき仕事と自動化できる仕事を切り分けていきます。
企業の現場で生まれている成果
実際に支援した物流会社では、財務部長が経理業務を一手に抱えていました。

そこで、
- 業務の見える化
- クラウド化
- 権限整理
- 業務分担
を進めた結果、財務部長が本来取り組むべき経営判断に時間を使えるようになりました。
また、社長は半月単位で業績を把握できるようになり、経営判断のスピードも向上しました。
さらに、人材不足による欠員リスクも大幅に軽減されました。
現在の課題は「仕事」よりも「プロマネ人材」
現在、チームMは60社以上と取引しています。
しかし課題もあります。
登録メンバーは120名まで増えましたが、案件全体をマネジメントできるプロジェクトマネージャーは17名しかいません。
企業が求めているのは単純作業者ではなく、
「考えられる人」
「判断できる人」
「改善提案できる人」
です。
そのため今後は、120名の中から次世代のプロジェクトマネージャーやサブマネージャーを育成することが最大のテーマになっています。
地方から全国へ、そして海外へ
現在は舞鶴本社ですが、すでに東京や大阪にもプロジェクトマネージャーがいます。
富山や岐阜からは視察も受け入れており、この仕組みへの関心が全国に広がり始めています。

さらにオーストラリアで開催される日本酒イベントの事務局支援も行っています。
海外展開では、販促活動そのものよりも、実は事務局業務や調整業務が非常に大きな負担になります。

私たちはそうした裏方業務を遠隔で支援することで、日本企業の海外展開を支えることも可能だと考えています。
おわりに ~埋もれた人材を地域の力に変える~
私たちが目指しているのは、単なるアウトソーシング会社ではありません。
子育てや介護、地方移住などによって第一線から離れた優秀な人材を再び社会とつなぎ、企業の課題解決に活かす仕組みをつくることです。
地方にはまだまだ活躍の機会を待っている人材がいます。
企業には人手不足や業務効率化という課題があります。
その両者を結びつけることで、新しい働き方と新しい地域経済のモデルを生み出していきたいと考えています。
舞鶴から始まったこの挑戦を、今後は全国へ広げていきたいと思います。